MedDRAコーディングを自動化する方法|手作業の限界とAI活用

Medimon開発チームMiina株式会社9分で読めます

有害事象ナラティブを1件ずつMedDRAコーディングする作業は、 経験豊富なPV担当者でも1症例あたり30〜60分を要することがあります。 症例数が増える時期や、効率化が求められるCRO(開発業務受託機関)・製薬企業のPV部門では、 手作業による負荷が品質維持と納期遵守の両面で課題となります。

また、担当者によって用語選択が異なるコーダー間ばらつき(Inter-Rater Variability)は、コーディング品質の一貫性に影響する継続的な課題です。

本記事では、MedDRAコーディングを「どこまで」「どのように」自動化できるのか、 また手作業の限界をAIでどのように補完できるのかを、PV実務の視点から解説します。

要点:MedDRAコーディングの自動化は、有害事象ナラティブから大規模言語モデル(LLM)が 有害事象候補を抽出し、PT/LLT候補を信頼度スコア付きで提示する仕組みによって実現します。 ただし、医薬品安全性の領域では、全自動化ではなく 「AIが下書きを作成し、PV担当者が最終確認する」ヒューマン・イン・ザ・ループが基本です。 これにより、1症例あたり30〜60分かかっていた作業時間を短縮できる可能性があります。

MedDRAコーディングはなぜ自動化が難しいのか

MedDRAコーディングが単純な自動化になじみにくい主な理由は、 単なる「用語の照合」ではなく、臨床的な判断を伴う業務だからです。 同じ症状の記述でも、報告内容や臨床経過によって選択すべき用語が変わります。

たとえば「薬を飲んだ後にふらついた」という記述であっても、 「浮動性めまい(Dizziness)」なのか、「回転性めまい(Vertigo)」なのか、 あるいは「失神寸前の状態(Presyncope)」なのかは、 随伴症状、既往、発現状況、経過を踏まえて判断する必要があります。 さらに、ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)が定めるMedDRA Term Selection: Points to Consider(PTC)の考え方に照らすと、機械的な用語照合だけでは不十分です。

  • 診断名と個別症状の関係(PTC 3.5.1): 確定診断が報告されている場合、その診断に含まれる個別症状は原則として個別にコーディングしません
  • 報告情報の忠実な反映(PTC 2.10): 報告された情報は適切にコーディングしますが、報告にない情報を推測で追加してはなりません
  • 最も具体的な用語の選択: 用語選択は可能な限り具体的なLLT(下層語)で行い、 非特異的な「NOS」用語は情報が不足する場合に限って選択します

このような判断を伴うため、キーワード辞書に単語を当てはめるだけの従来型の自動化では、 PV実務で安心して利用できる水準に達しにくいという課題がありました。

MedDRAコーディングの自動化では何を行うのか

近年の自動化では、大規模言語モデル(LLM)を用いて、 ナラティブの意味や文脈を踏まえたうえでコーディング候補を提示するアプローチが取られています。 具体的には、次のような処理を行います。

  • イベント抽出: ナラティブから有害事象、症状、診断名に該当する記述を抽出します
  • 用語マッピング: 抽出したイベントをMedDRAの階層(SOC/HLGT/HLT/PT/LLT)に対応づけます
  • 信頼度スコアの付与: 各候補の信頼度を数値で示し、確認が必要な箇所を明確にします
  • 規則の適用: PTCの考え方を踏まえ、診断名と症状の重複コーディングなどを避けます

重要なのは、AIがPV担当者を代替するのではなく、レビュー可能な下書きを作成する点です。 AIが提示するのはあくまで候補であり、採否の判断は専門家が行います。

AIによる自動化の精度はどのくらいか

AIに任せて問題ないのか、という懸念は当然あります。 Medimonでは、元IQVIAのPVスペシャリストが作成したゴールドスタンダード(正解データ)を用いて、 MedDRAコーディング精度を検証しました。 20件の合成ナラティブ(70のMedDRA用語を含む)に対する結果は、F1スコア87.9%(Recall 88.6%/Precision 87.3%)でした。

この水準は、ドラフト作成ツールとして実用を検討できる結果です。 PV担当者はゼロから用語を探すのではなく、 AIの提案に対して「承認」「修正」「却下」を判断する作業に集中できます。 精度向上の鍵となったのは、PTCの考え方をプロンプトに適切に反映することでした。 汎用的なNLP処理をそのまま用いるだけでは不十分でしたが、 PTCに基づく判断基準を組み込むことで、候補提示の精度が改善しました。

一方で、F1スコア87.9%は、一定数の確認・修正が必要であることも示しています。 そのため、最終確認を人が担うワークフローが前提となります。

完全自動化は可能か:ヒューマン・イン・ザ・ループの重要性

結論として、医薬品安全性の領域でMedDRAコーディングの完全自動化を前提とすることは適切ではありません。 コーディング結果は規制当局への報告、集計、シグナル検出に関わるため、 最終判断は専門知識を持つ担当者が行う必要があります。

ヒューマン・イン・ザ・ループとは、AIの出力に対して人による確認を組み込む運用です。 AIがドラフトを作成し、専門家がレビューして確定する。 この考え方は、AIを「代替」ではなく「支援」として位置づけるものです。

Medimonが目指すのは、PV担当者を置き換えることではありません。 専門家が単純作業に費やす時間を減らし、 より高度な判断や品質確認に時間を使えるようにすることです。

自社のPV業務にどう導入するか

導入の第一歩は、日常のコーディング業務の一部でAIによる下書きを試し、 既存の品質基準と照らして評価することです。 いきなり全工程を置き換えるのではなく、 「AIドラフト → 人による確認」のワークフローを小さく試すことが現実的です。

  • まずは無料のMedDRA Auto-Coderで、自社の代表的なナラティブを数件試す
  • AI提案と自社の既存コーディングとの差分を確認し、傾向を把握する
  • 社内のコーディングガイドラインやQAチェックと併用し、一貫性を担保する

このように、既存のPVプロセスを前提にAIを補助的に組み込むことで、 品質を維持しながら業務効率化を進めやすくなります。

実際にMedDRAコーディングの自動化を試すには

Medimonの無料MedDRA Auto-Coderなら、有害事象のナラティブを貼り付けるだけで、 信頼度スコアとPTC規則の引用付きでPT/LLT候補を確認できます。 登録は不要で、入力データは保存しません。 複数症例をAE抽出から評価票まで一括処理したい場合はPVケースワークスペースをご利用ください。あわせて、自動分類の技術的背景を解説した有害事象ナラティブの自動分類 --- AI活用の現状と課題もご覧いただけます。

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よくある質問

MedDRAコーディングは完全自動化できますか?

完全自動化は推奨しません。AIはコーディングの下書きを高速に作成できますが、 規制当局への報告に直結する最終判断はPV専門家が行う必要があります。 「AIが下書き、人が確認」のヒューマン・イン・ザ・ループが原則です。

AIのコーディング精度はどのくらいですか?

Medimonでは、元IQVIAスペシャリストが作成したゴールドスタンダードを用いて検証し、 F1スコア87.9%(Recall 88.6%/Precision 87.3%)を確認しています。 ドラフト作成ツールとして実用を検討できる水準ですが、最終確認は人が行う前提です。

入力したデータは保存されますか?

保存しません。すべての処理はAWS東京リージョンで実行され、 未登録で利用する場合、入力データは処理後に破棄されます。 ユーザーデータがAIモデルの学習に使われることもありません。

無料で使えますか?

MedimonのMedDRA Auto-Coderは無料でご利用いただけます。 登録不要で、ナラティブを貼り付けるだけでPT/LLT候補を確認できます。

どんなデータ形式に対応していますか?

有害事象のナラティブ(症例経過のテキスト)を貼り付けて利用します。 複数症例をまとめて処理し評価票まで作成したい場合は、 PVケースワークスペースをご利用ください。

出力結果はPMDA提出にそのまま使えますか?

そのままの提出は想定していません。Medimonの出力はドラフトであり、 提出前に必ずPV専門家が確認・確定してください。 Medimonは既存の安全性データベースを補助する位置づけで、 規制当局による承認・認証を受けたものではありません。